仏に帰依し、法に帰依し、僧伽に帰依した修行者は、戒を実践します。この四つが揃って、はじめて、仏教における信仰に入ったと言えます。
戒とは
戒とは、もともと、生活習慣という意味です。良い生活習慣を善戒と言い、悪い生活習慣を悪戒と言います。ただ戒というときは、善戒を指します。
修善の戒と止惡の戒
「戒」の修行には、「修善の戒」と「止惡の戒」があります。
すでに身についている善い生活習慣をさらに向上させ、まだ身についていない善い生活習慣を身につける修行を「修善の戒」と言います。
悪い生活習慣が身につかないようにし、すでに身についてしまった悪い生活習慣を押さえ、無くしてしまうように努力する修行を「止惡の戒」と言います。
順序としては、まず「修善の戒」に励みます。すると、「修善の戒」の修行を邪魔する惡戒が出てきます。この惡戒を押さえたり、無くしたりするために「止惡の戒」を実践します。
こうして、善いことを行ない、悪いことは行わない自分へと成長していくのです。
初心者の戒
初心者は、指導者から、「あなたはこういう善い生活習慣を身につけなさい」と言われて、その通りに努力します。また、「あなたには、こういう悪い生活習慣があるから、これを押さえなさい」と指導されて、その通りに努力します。
当初は、言われた通りにはなかなか実行できないものですが、繰り返し繰り返し努力するうちに、だんだん実行できるようになります。
自発的・主体的な努力
本来の戒は、自発的、主体的に実行するべきものです。
自分は、こういう善い生活習慣を身につけようと自発的に決心し、自分の意思で、主体的に実行するのです。
自分には、こういう悪い癖があるから、この癖を出さないように努力しようと、自発的に決心し、自分の意思で、その悪い癖が出てきたら押さえようと努め、さらに、この悪い癖を無くそうと決心して、無くす努力をします。
このような、自発的・主体的な努力を続けることよって、善い行いができて、悪い行ないができない自分になっていくのです。
八正道と戒
八正道(正見・正思・正語・正業・正命・正精進・正念・正定)のうち、「正思・正語・正業・正命」は、戒の実践項目です。
このうち、「正語・正業」は、表面的な行ないであり、この行いによって人間関係が営まれます。社会的には、もっとも重要なところといえるでしょう。
「正語・正業」は、「正思」に支えられます。「正思」は、「正見・正命・正精進・正念・正定」に支えられます。
すなわち、戒の実践は、全人格的な内容を持っていることが分かります。よりよい人間関係を結ぶことができる自分になるには、全人格的な修行が必要であるということが分かります。(参照⇒人生のための信仰)