縁起の法

仏教

縁起の法

 お釈迦さまは、縁起の法を正覚なさって、ブッダとなられたと伝えられています。また、お釈迦さまの教えのすべては、縁起の法から生まれたとも聞いています。
 お釈迦さまといえば縁起の法を思い出し、縁起の法といえばお釈迦さまを思い出す。それが仏教徒の自然な気持ちでありましょう。
 お釈迦さまは、縁起の法をさまざまに表現なさいました。そのなかに「原因・結果の原理」、「原因・条件・結果・影響の原理」があります。これらについて、学んでみたいと思います。

原因・結果の原理

 「原因・結果の原理」の基本は、「原因があって、結果がある」ということです。
 ここから、次のことが明らかになります。

  • 結果があるからには原因がある
  • 結果が欲しければ原因を作ればよい
  • 原因が無ければ結果はない
  • 結果を無くしたければ原因を無くせばよい
  • 原因を変えれば結果が変わる
  • 結果を変えたければ原因を変えればよい

 これらの法則を使って、ものごとに対処することができます。
 仏教の代表的な教えである「四聖諦」の教えは、原因・結果の原理によって構成されています。

原因・条件・結果・影響の原理

 「原因・条件・結果・影響の原理」は、次のように説明されます。

  • 原因:ものごとが起きるには、必ず原因があります。
       しかし、原因だけでは何も起きません。
  • 条件:ものごとが起きるには、必ず条件があります。
       しかし、条件だけでは何も起きません。
  • 結果:原因と条件が触れ合うと、必ずものごとが起きます。
       起きたものごとを結果といいます・
  • 影響:結果がそれだけで終わることはありません。
       必ずあとあとに影響を残します。

「原因・結果の原理」と「原因・条件・結果・影響の原理」の関係

 「原因・条件・結果・影響の原理」と「原因・結果の原理」は、同じことを言っています。
 「原因・条件・結果・影響の原理」の「原因・条件」を改めて「原因」とし、「結果・影響」を改めて「結果」としたものが、「原因・結果の原理」となります。
 ものごとを大づかみにとらえるときは、「原因・結果の原理」を用い。詳しく見るときは「原因・条件・結果・影響の原理」を用いればいいと思います。

縁起の法の活用上の留意点

 縁起の法は、万能の原理です。あらゆる現象に適用することができます。
 その際、留意すべきことがあります。
 縁起の法を活用するときは、自分の中に、貪欲・瞋恚・愚痴がはたらいていないことが求められます。貪欲・瞋恚・愚痴がはたらいている状態では、縁起の法を理解することができません。論理は理解できても、本質的な意味は分かりません。このため、縁起の法を無視したり、自分本位に曲解したりして、迷いを生じ、誤った道を歩んでしまいます。

縁起観

 「縁起の法」によってものごとを見ることを、「縁起観」と言います。ものごとを「原因・結果の原理」や「原因・条件・結果・影響の原理」で分析・総合して、ありのままの事実をありのままに認識するのです。

 経営・ビジネスに関するものごとを、「原因・結果の原理」、「原因・条件・結果・影響の原理」で分析、整理し、よりよい経営・ビジネスを営むことを目的として開発した実践理論を、「ビジネス縁起観」といいます・ 

広がりと深み

 「原因・結果の原理」と「原因・条件・結果・影響の原理」は、縁起の法の表現です。この表現を活用して、多くの問題に取り組むことができます。
 縁起の法は、このほかにも、いろいろな表現がなされています。
 縁起の法は、広がりと深みを持っています。お釈迦さまは、その広がりと深みを、さらにはその本質を正覚なさったのだと思います。
 お釈迦さまのお導きを受けて、縁起の法を学び、実践することによって、その広がりと深みに、一歩一歩踏み入ることができると信じて、私も、学びと実践を繰り返しています。

 

浪 宏友(本名:中原常友)
詩人・仏教研究家・経営コンサルタント
妙法蓮華経と原始仏教を学び続けて70年
宗教ではない仏教「ビジネス縁起観」を開発
1940年(昭和15年)生

namiをフォローする
仏教