八正道

八正道 仏教

八正道

 八正道とは、次の八つの道です。
  正 見:正しい見方
  正 思:正しい思い
  正 語:正しい言葉
  正 業:正しい行為
  正 命:正しい生き方
  正精進:正しい努力
  正 念:正しいことに念いをこらす
  正 定:正しいことに心を専注する

正見

 正見とは「正しい見方」です。自分の目で、「ものごとのありのままをありのままに見る」ということです。
 「ものごとのありのまま」とは、「起きているできごとのありのまま」と、「そこにはたらく法則のありのまま」です。このふたつのありのままを、同時に、ありのままに見るのが「正しい見方」です。
 「法則」とは「縁起」であり、「原因・条件・結果・影響の原理」です。
 仏教では「自分のありのままをありのままに見る」ことに努めます。自分が人格的に成長することを目的としているからです。

正思

 正思とは「正しい思い」です。
 思いには、知性的な思いと感情的な思いがあります。
 自分の知性的な思いと感情的な思いの両方が、真理にかなっていることを、「正しい思い」と言います。
 思いの中に、貪欲・瞋恚・愚痴が混じっていると、自分本位の誤った思いに傾いていきます。「正しい思い」をたもつには、自分の中の貪欲・瞋恚・愚痴を無くすか、働かなくする必要があります。

正語・正業

 正語は「正しい言葉」、正業は「正しい行為」です。
 思いが、言葉を生み、行為を生みます。「正しい思い」が、「正しい言葉」、「正しい行為」を生み出します。
 人間関係は、言葉と行為で営まれます。
 「正しい言葉」と「正しい行為」によって、真理に合った正しい人間関係を結ぶことができます。
 「正しい言葉」と「正しい行為」は、「正しい思い」から生み出されるのですから、よりよい人間関係を結ぼうと思うなら、「正しい思い」を持ち、そこから「正しい言葉」、「正しい行為」が生れるように心がけることになります。

正命

 「正命」とは「正しい生き方」です。
 生きるためには、住居を持ち、職業を持ち、家庭を営み、世間の人びとと付き合うなど、さまざまなことと取り組まなければなりません。
 自分が生きるとき、そのすべてにわたって正しくあることが「正しい生き方」であるということです。
 「正しい見方」、「正しい思い」、「正しい言葉」、「正しい行為」が、「正しい生き方」において総合されます。
 また、「正しい生き方」を貫くことが、「正しい見方」、「正しい思い」、「正しい言葉」、「正しい行為」を育みます。

正精進

 「正精進」とは、「正しい努力」をすることです。
 自分の「見方」「思い」「言葉」「行為」「生き方」が、常に正しくあるように努力するのです。
 原始仏典には、次のような教えがあります。
 自分が正しい行ないを行なっていたら、この先もそれが続くように努力しよう。
 自分が行なっていない正しい行ないがあったら、行なうように努力しよう。
 自分が誤ったことを行なっていたら、やめるように努力しよう。
 自分が行なっていない誤ったことは、この先も行なわないように努力しよう。
 こうして、自分の行ないのすべてが正しくあるように、努力し続けるのです。

正念

 「正念」とは「正しいことに念いをこらす」ことです。
 自分の身体を正しく保とうと念いをこらします。
 ものごとの受け取り方、認識の仕方を正しく保とうと念いをこらします。
 自分の思いを正しく保とうと念いをこらします。
 自分と周囲の人々との間を正しく保とうと念いをこらします。
 もしも、自分に誤ったことがあったら、急ぎ修正して、正しい在り方に戻ろうと念いをこらします。
 こうして、常に正しい自分であろうと、念いをこらすのです。

正定

 「正定」とは「正しいことに心を専注する」ことです。
 自分が正しくあるために、正しいことに心を専注するのです。
 「正しい見方」に、心を専注します。
 「正しい思い」に、心を専注します。
 「正しい言葉」に、心を専注します。
 「正しい行為」に、心を専注します。
 「正しい生き方」に、心を専注します。
 「正しい努力」に、心を専注します。
 「正しいことに念いをこらす」ことに、心を専注します。
 このように、自分を正しく保つことに心を専注して揺るがないのです。

3種の八正道

 八正道には、三つのステージがあると考えられます。
 「涅槃への八正道」というステージがあります。修行者が、涅槃に向かって、一歩一歩向上していく道筋です。
 「涅槃における八正道」というステージがあります。修行が成就して、涅槃に至った修行者が、涅槃の境地で実践する八正道です。原始仏典では、阿羅漢の境地に達した修行者がこの八正道を実践します。
 「涅槃からの八正道」というステージがあります。涅槃の境地に至った修行者が、人びとを「涅槃への八正道」に導き入れ、涅槃へと導き上げる八正道です。
 なお、このページでご説明した正見から正定までは、「涅槃への八正道」です。

涅槃

 「涅槃」とは、阿含経によれば、「貪欲・瞋恚・愚痴が無い」ということです。
 自分の中に、貪欲・瞋恚・愚痴が無くなった境地を「涅槃」というのです。
 人間は、元来、真理に生かされて生きている存在ですから、貪欲・瞋恚・愚痴が無くなれば、真理に生かされるままに生きることになります。それゆえ、自分本来のいのちを生きることになりますから、最も個性的で、もっとも自分らしい生き方を、自由自在に生きることとなります。

するべきことをする

 ビジネス縁起観では、八正道の実践を、「するべきことをする、してはならないことはしない」と表現しています。
 言葉にするべきことを言葉にし、言葉にしてはならないことは言葉にしません。
 行なうべきことを行ない、行なってはならないことは行ないません。
 思うべきことを思い、思ってはならないことは思わない自分になります。
 八正道をこのように表現して、皆さまにお話させていただいております。

浪 宏友(本名:中原常友)
詩人・仏教研究家・経営コンサルタント
妙法蓮華経と原始仏教を学び続けて70年
宗教ではない仏教「ビジネス縁起観」を開発
1940年(昭和15年)生

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