諸行無常・諸法無我ワールド
私たちは、諸行無常・諸法無我ワールドに生きています。諸行無常・諸法無我ワールドは、さまざまな存在が関係しながら変化する世界です。人間世界においても、人と人とが関係しながら、変化を続けています。
関係・変化にはそれぞれ方向性があります。関係の方向性は調和です。変化の方向性は発展です。諸行無常・諸法無我ワールドには、調和しながら発展するという方向性があります。
人間界においても、一人一人が調和と発展を指向します。また、人間関係においても、調和と発展の人間関係が望まれます。
こうした中での、私たちの心の世界について考えてみたいと思います。
十界
仏教では、心の状態を、十の世界になぞらえて説明しています。
地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人間界・天上界・声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界の十の心の世界です。これを十界と言います。
このうち、地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人間界・天上界の六つの世界を六界または六道と言います。
声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界を聖者の四界と言います。「聖者」と言いますと、宗教的な人を思い浮かべますが、ここでは「真の人間の生き方をしている人」という意味です。
六道
六道とは、地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・人間界・天上界の六つの世界です。六道は、貪欲・瞋恚・愚痴の三毒にまみれた人びとが、自分本位の心で生きる世界です。諸行無常・諸法無我ワールドの観点から見ますと、六道の人びとは、調和と発展という方向性から外れた生き方をしています。このため、六道では苦悩が絶えません。
人間界だけは、他の五つの世界とは異なる要素があって、この要素が、他の五つの世界とは異なる生き方を生み出すことがあります。
地獄界:自分本位のわがままな心で、自分の意に沿わないことを怒っている状態です。
餓鬼界:自分本位の欲望で、際限なく欲張っている状態です。
畜生界:自分本位の愚かな心で、感情のままに振舞っている状態です。
修羅界:自分本位の主張をして、人と争い、いがみ合っている状態です。
人間界:他人と自分の関係を意識して、自分を制御している状態です。この「自分を制御する」というところが、他の五つの世界には無い要素です。
天上界:自分本位の欲望が満たされて満足し喜んでいる状態です。六道に生きる人びとは、天上界を幸福の境地と思って求めます。
六道では、心が、これら六つの世界をぐるぐる巡ります。これを、六道を輪廻すると言います。心はどんどん変わるのですが、どう変わっても、この六つの世界から出ることはできません。図が円環となって閉じているのは、そのことを表しています。

聖者の四界
声聞界・縁覚界・菩薩界・仏界を聖者の四界と言います。「聖者」とは「真の人間の生き方をしている人」という意味です。
お釈迦さまの教えを修習して真の人間の生き方に目ざめ、真の人間の生き方を生きるようになった人びとの世界が、聖者の四界です。
者の四界では、貪欲・瞋恚・愚痴の三毒を捨てた人びとが、諸行無常・諸法無我ワールドの調和・発展の方向性に合った生き方をします。
声聞界:お釈迦さまの教えを学び、理解し、信頼し、実行している境地です。
縁覚界:お釈迦さまの教えを学び、自ら体験して、ひとつひとつ悟りを得ている境地です。
菩薩界:お釈迦さまの教えの真意を悟り、人びとを聖者の四界に入らせるために努力している境地です。
仏 界:最高の悟りに入り、慈悲と智慧で人々を救い続ける境地です。この境地にいたることが、仏道修行者の目標です。

聖者の四界では、調和から発展が生まれてより高度な調和にいたるという変化を繰り返します。図は、それを表しています。すなわち、聖者の四界では、人は人間的成長を続けるのです。
苦悩の世界
六道は苦悩の世界であると言えます。貪欲・瞋恚・愚痴の心をいだいて、自分本位の心で六道に生きるかぎり、思いに任せぬ苦悩が次から次へと起きてきます。
天上界に入れば、幸福を味わうことができますが、それもいっときのことで、すぐに他の世界に堕ちこみ、苦悩します。
苦悩することを終わらせたいと思うなら、六道を出るほかありません。六道を出るということは、聖者の四界に入ることを意味します。
人間界から聖者の四界へ
六道のうち、地獄界・餓鬼界・畜生界・修羅界・天上界は、貪欲・瞋恚・愚痴に埋没している世界です。ここから聖者の四界への道はありません。
六道のうち、人間界は、他人と自分の関係を意識して、いくらかでも自分を制御する世界です。ここに、聖者の四界への道が開けてくる可能性があります。
人間界において、他人と自分の関係を意識して自分を制御するうちに、調和、発展を経験することがあります。そうした経験をした人が、お釈迦さまの教えに触れれば、聖者の四界への目が開くことがあるのです。
そこから、お釈迦さまの教えを学び、理解し、信頼して実践する道に入り、繰り返し、繰り返し修習すれば、貪欲・瞋恚・愚痴の三毒を滅して、聖者の四界に入り、真の人間の生き方を生きるようになります。
仏教では、六道から出て聖者の世界に入ることを、救われると言います。


